派遣社員の2018年問題とは?
去年の終わりごろからニュースでも耳にするようになった、派遣の2018年問題。
対象となるのは、派遣会社・派遣社員・派遣先企業、となります。
では正社員には全く関係ないのかと言えば、そうでもありません。
まず事の発端を説明すると、法施行が原因です。
・2013年4月に改正労働契約法の施行
・2015年9月に改正労働者派遣法の施行
この2つの法が施行されたことにより、今回の2018年問題が浮き上がりました。
どのような法なの?
2つの法に関して、もう少し詳しく見ていきましょう。
まずは2013年改正労働契約法について。
5年以上の有期雇用契約者に対して、無期雇用契約に移行できる、無期転換、の申し込み権が発生する。
これが俗に言う5年ルールです。
次に2015年改正労働者派遣法について。
3年を超えて同一企業の同一部署に勤める派遣社員が、派遣先企業での直接雇用か、派遣会社での無期雇用へ移行する可能性がある。
これが俗に言う3年ルールです。
詳細は後ほど記載しますが、これを読んでいて気づきましたか???
2013年 → 5年ルール → 2018年
2015年 → 3年ルール → 2018年
そう、どちらも今年2018年に条件にあてはまる派遣社員の方があふれます。
そうなるとどうなるの?
具体的にどうなるかはまだ分かりません。
というのも、2年先にはオリンピックが控えています。
そして、経済は順調に回復傾向にあります。
つまり、一時のどん底の不景気ではないんですね。
もし不景気が続くなら、たぶん労働者にとって良い法とは言えないでしょう。
もしこれから景気が上向くなら、労働者にとって良い方向に向かうのではないでしょうか?
しかし、手放しで「そうなんだ」と他人事として考えるわけにはいきません。
それを説明する為に、上記の2つの法についてもっと詳しく見ていきましょう。
①2013年改正労働契約法(5年ルール)
まずこちらの法(5年ルール)は派遣会社と派遣社員との契約が対象となります。
派遣社員の方は、派遣会社と契約する事で、派遣先企業で仕事ができます。
この時、通常は有期契約となります。
つまり、3ヶ月更新、というような期間付きの契約の事です。
しかし今回の5年ルールにより、これまでずっと更新して契約していたものが、無期契約へと移行できる申し込み権が発生するというものです。
もちろん、選択権があるだけなので、強制ではありません。
どのような影響があるかは後ほど記載しますので、次にもう1つの3年ルールを見ていきましょう。
②2015年改正労働者派遣法(3年ルール)
次に3年ルールを見ていきましょう。
3年ルールは、派遣会社・派遣社・派遣先企業、による契約が対象になります。
3年以上の期間、同一企業の同一部署に勤める派遣社員の方が、派遣先企業での直接雇用、もしくは、派遣会社での無期雇用へ移行することが出来るというものです。
もちろん、こちらも選択権を得る事が出来るだけで、強制ではありません。
ただし、あくまで労働者に選択権が発生するだけで、企業側(雇用主)は義務付けられます。
メリット・デメリットは?
これだけをみれば、メリットしかないように思いますが、必ずしもメリットだけではありません。
やはりデメリットは少なからずあるはずです。
ココからは、法の施行による影響(メリット・デメリット)を見ていきましょう。
5年ルールのメリット
まず大前提として、労働者がより安定して仕事ができる環境作りです。
派遣社員は契約更新におびえながら仕事をしている人もいます。
しかし、今回の法により、無期契約となれば契約更新におびえる必要はなく、常に安定して仕事ができます。
そして、無期契約となる事で、休業手当などの手当てが発生する可能性もあります。
今までは、契約から契約までの間は無給だったものが、一定額の割合で休業手当が貰えるというものです。
そして、有給休暇などや、福利厚生も手厚くなる可能性があります。
※必ず派遣会社との雇用契約をしっかり確認してください※
5年ルールのデメリット
メリットを見てきましたが、やはりデメリットもあります。
これまでは「派遣社員」として働いていましたが、「無期契約」を結んでしまうと正社員と同じような扱いになるため、派遣先企業や勤務地、労働時間などを自由に選べなくなる可能性があります。
派遣社員として働く方の中には、なんらかの事情で労働条件に制約がある方もいるでしょう。
そういった方達にはやはりデメリットとなる可能性もあります。
※必ず派遣会社との雇用契約をしっかり確認してください※
3年ルールメリット
同一部署等で戦力として長年働いてきた派遣社員を、正社員や契約社員として直接雇用してもらえるというもの。
長年働いていると、それなりのスキルを持っているため、正社員として働いたほうが安定するのは間違いありません。
しかし、こちらの3年ルールはどちらかというとデメリットが多いように思います。
※必ず派遣会社との雇用契約をしっかり確認してください※
3年ルールのデメリット
先ほど、長年働いていると、と書きましたが、これは3年が上限となります。
同一部署等での雇用が認められるのが最長3年となった事で、それ以降は契約終了、もしくは直接雇用のどちらかとなります。
つまり、正社員を希望しても、もし派遣先企業に正社員(直接雇用)として雇ってもらえない場合、他への派遣となってしまいます。
これから先も派遣社員を希望していても、正社員を断った場合は他への派遣となってしまいます。
今まで同一企業(部署)でスキルを身につけても、いきなり労働先が変わるときついですよね。
スキルだけではなく、人間関係等の職場環境も変わるわけですからね。
ここまで、メリット・デメリットを見てきましたが、これはあくまで労働者側のものです。
つまり、企業側にもメリット・デメリットがあるので、必ずしも労働者にとって良いかどうかは分かりません。
※必ず派遣会社との雇用契約をしっかり確認してください※
次は、企業側、そしてその企業で働く正社員からの目線で考えてみましょう。
企業・正社員側の考えられるメリット・デメリット
まず企業としてのメリットは、戦力のある正社員を増やす事が出来る、という事が挙げられるでしょう。
不景気のあおりで、正社員を雇わず派遣社員を雇っていた企業も沢山あると思います。
これから景気が上向いてくれば、おのずと正社員を増やすはずです。
しかし、何も知らない正社員を雇うよりは、スキルのある派遣社員を正社員として迎えたほうが企業側としてもメリットは大きいです。
これは私の憶測ですが、今までは派遣社員を正社員として引き抜くのはNGだった会社もあるはずです。
これが法により認められることで、よりスキルのある正社員を雇うことが出来ます。
次はデメリットですが、中には正社員を増やしたくない会社もあるはずです。
コレについてはあえて詳細を割愛しますが、やはり派遣社員を雇うにはそれなりの理由もあります。
つまり、派遣社員を正社員として迎えたくない場合、スキルのある派遣社員を失う可能性があるという事です。
派遣社員の交代で、スキルのある派遣社員が来ればよいですが、そうでない場合は企業側にとってはきついですよね
次は、その企業で働く正社員についてのメリット。
先にも書きましたが、スキルある派遣社員が正社員になれば、他の社員も仕事が楽になると思います。
ただしデメリットもあります。
それは、今まで正社員と派遣社員という関係性が崩れる事で、もしかすると自分の方が部下になってしまう可能性があります。
まあこれはデメリットというよりは、自分が頑張るしかないんですけどね・・・
そして、最悪の場合は自分が解雇・降格などに陥る可能性もあります。
まああくまで最悪の場合ですが、0%ではないでしょう。
同じ舞台に立つわけですから、これはもうお互い切磋琢磨するしかありません。
まとめ
かなり長くなりましたが、結局の所、一長一短ある法施行ですね。
派遣社員を希望している人、正社員になりたい人、どちらも考え方は違いますから、どちらが良いとは言えません。
そして、自分だけの問題ではなく、派遣会社・派遣先企業との兼ね合いもありますから、全てをうまく収める方法はないのかもしれません。
その中でうまくやっていく為には、やはり今回の法を理解し、それにあわせて働いていくしかなさそうです。
私の体験談として余談を少し・・・
実は、私も派遣社員として働いた事があります。
もう10数年前ですけどね。
この時に私が感じたメリットとしては・・・
・時給が高い
・勤務時間等の都合が良い
という事でした。
同じ会社でも、バイトと派遣では派遣社員の方が給料が良かったです。
そして、勤務希望時間を選べたので、昼までの短時間で仕事が出来ました。
つまり、直接雇用より楽に働けた、んですよね。
私が派遣として働いていたのは、以上の理由からです。
これが直接雇用となると、給料も下がるし、毎日きっちり時間通り働かないといけなくなります。
派遣社員として働く人の中には、私と同じように感じている人もいるかもしれません。
しかし、派遣社員という事だったので、すぐに契約終了させられる人も多くいました。
雇用は安定しないので、お金が無いといっている人も多かったです。
結局、どっちもどっちですよね。
正社員だからといって解雇されないわけではないし、派遣だからといって必ずしも働けないなんて事はありません。
それでは以上となります。